損切りが約定した数分後に、価格が反転する。
「また監視されてる」「業者にハメられたんじゃないか」。この記事を開いた人の頭には、たぶん一度はそういう言葉が浮かんだことがあるはずです。私も損切りを先送りしていた頃、耐えて、耐えて、やっと切った場所が底になるのを何度も見ました。
読み終わる頃には、あの反転がなぜよりによってそこで起きたのかを、自分の言葉で説明できるようになっていると思います。
先に立ち位置を書いておきます。私は以前からダウの押し安値・戻り高値と移動平均で相場を見ていて、「注文が集中する場所」も見るべきものの一つとして持っていました。抜けていたのは「なぜそこで割れて、すぐ戻るのか」の部分です。2026年の夏にSMC(スマートマネーコンセプト)という別の言葉で同じことを言い直されて、そこが腑に落ちました。勝てるようになった話とは違います。抜けていた1ピースが埋まった、という話です。
【この記事の核心】
損切りが溜まる場所に、価格はやって来る。
損切り直後に反転する場面を、当時の私はこう見ていました
サポートラインで買う。損切りはラインの少し下。価格はラインを割って、損切りにかかって、そこから上がっていく。この記事で扱う場面は、最後までこの一つです。
根拠を持たずに勢いでエントリーしていた頃の私が、このチャートで見ていたのはラインの「線」でした。チャートを開いて、線で2回止まった形を見つける。「今日はいけそう」と思う。買う。線の下に数pips置けば守られる、と損切りを置く。根拠と呼べるものは、それで全部でした。
ヒゲ1本で刈られて、そのあとで伸びる。当時の私はそれを「ダマシ」の一言で片付けて、次からは損切りを置くこと自体を先送りするようになりました。どうせ刈られるなら切りたくない、という発想ですね。今思えば逆でした。記録を付けていなかったので、通貨ペアも、何pips抜かれたのかも手元に残っていません。残っているのは、切った直後に伸びていく画面の記憶と、口座残高の減り方くらいです。
一般的な説明はこうです。損切りが浅い。ダマシに引っかかった。メンタルの問題。どれも間違いではありません。ただ、どれも「なぜ、よりによってそこで反転するのか」には答えていないんです。
答えに入る前に、言葉を一つ決めておきます。流動性。この言葉には二つの意味があって、検索で出てくるのはほとんど一つ目の方です。
| 使われ方 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 一般的な意味 | 市場の厚み。売買がすぐ成立するかどうか | 「ドル円は流動性が高い」「早朝は流動性が薄い」 |
| この記事での意味 | 注文が溜まっている場所。とくに損切り注文の溜まり場 | 「ラインの真裏に流動性がある」=そこに損切りが並んでいる |
以降、流動性と書いたら二つ目の意味です。買いポジションの損切りは売り注文、売りポジションの損切りは買い注文。これを頭に置いて、次の節へ進んでください。
【この記事の山場】同じチャートを「注文の溜まり場」の目線で見直す
今度は自分の注文を見ません。ラインの下に並んでいる、他人の注文を見ます。サポートラインで買った人の損切りは、ラインの少し下に置かれます。私に限りません。同じ本、同じ動画で学んだ人の分が、同じ場所に並びます。ラインの真下に、売り注文の束ができるわけです。
ここからが、当時の私に抜けていた力学です。価格が下に行くには、誰かが売る必要があります。ラインに近づくと、割れを恐れた買い手の手仕舞い売りと、ブレイクを狙う新規の売りが出ます。この時点の売りは、まだ薄い。ただ、その薄い売りでラインが割れた瞬間に、裏に並んでいた損切りが次々に執行されて、まとまった売りが一度に市場へ出ます。
大きな資金で買いたい側から見ると、この瞬間が、まとめて買える数少ない場面になります。少しずつ買えば自分の買いで価格が上がってしまう。売りが一度に出る場所でなら、価格を上げずに買える。その買いが損切りの売りを吸い切ると、売りが尽きて、反転します。
ここで一つ、はっきりさせておきます。誰かが意図して価格をそこまで運んでいるのかどうかは、私には確かめられません。確かめられるのは、意図があってもなくても、同じ場所に損切りが集中していれば同じ形になる、ということです。薄い売りでラインが割れ、損切りが連鎖し、その売りを誰かが買う。この順序は変わりません。だからこの記事が扱うのは「誰が」ではありません。「どこに溜まっているか」です。
この力学はSMC特有の話でもなく、国内FX業者のオーダーブック解説でも、損切り注文は価格が動く方向へ向かう注文で、レンジ突破やダブルトップで価格が大きく動くのはこの損切りによるところが大きい、と説明されています(OANDA証券のオープンオーダー解説・2026年8月閲覧)。
損切りが溜まる場所に、価格はやって来る。抜けたから反転したのではなく、抜くために来て、吸い終わったから反転した。この流れを1枚にまとめたのが、次の図です。

この動きには名前がついていて、スイープ、あるいはストップ狩り(損切り狩り)と呼ばれます。
出所についても正直に書くと、この考え方の元になっているICT(The Inner Circle Trader)の教材全般には、銀行間の価格配信アルゴリズム(IPDA)が流動性を目当てに価格を運ぶ、という世界観が通底しています。後述する10〜20pipsの目安は、本人の動画ICT Forex – What New Traders Should Focus On(英語・2026年8月閲覧)から。日本語ではゆうきのせかい「SMCにおけるLiquidityの基礎」が、この動画を含むICT本人の動画をもとに同じ立場で書いています。つまり出所は実質この1系統(ICT→ゆうき氏)で、私が借りているのはこの1点です。人物の評価はしません。私自身はアルゴリズムの存在までは言い切らず、「注文が集まる場所に価格は来る」と言い直して使っています。
【刈られやすい置き方】
ラインの真裏、数pips下に損切りを置く
抜けたら「ダマシ」で片付けて、置き方は変えない
【溜まり場を前提にした見方】
ラインを「損切りの帯」として見る
帯を抜けて戻る動きを確認してから、入るかどうかを考える
損切りが溜まりやすい場所と、薄い場所(例と反例)
溜まりやすい場所の代表が、並んだ高値・安値(Equal Highs / Equal Lows)です。2回、3回と同じ水準で止まった安値は、誰が見ても「固い」と感じる。固いと感じる人が多いほど、その真下に損切りが密集します。反例は、一度しか触れていない単発の高値や安値で、裏に置かれている損切りが薄いので、抜けても何も起きずに通過することがよくあります。
| 溜まりやすい(抜かれやすい) | 薄い(抜けても反応が鈍い) |
|---|---|
| 並んだ高値・安値(Equal Highs / Lows)、ダブルボトムの2つの安値 | 一度しか触れていない単発の高値・安値 |
| 前日・前週の高値・安値、キリ番 | 誰も引いていないような途中の小さな山谷 |
| 多くの人が同じ引き方をする水平線 | 引く人によって位置がずれる斜めの線 |
10〜20pipsという目安を、自分の時間足にどう落とすか
どこまで抜けたら「吸い終わった」とみなすか。前述のICTの動画は、高値や安値を10〜20pipsほど抜く動きを目安として挙げていて、ゆうき氏の記事も10〜20pips以上抜けたら深いスイープとして扱う整理です。出所は実質1つなので、この数字は目安であってルールではありません。5分足の20pipsと日足の20pipsは別物ですし、上位足ではもっと大きく抜けても「浅い」扱いになることがある、とゆうき氏も書いています。
もう一つ、ICTとゆうき氏が共通して持っている見方があります。抜けが浅い、つまり帯の損切りを取り切れていないときは、もう一度取りに来る可能性が高い、という見方です。私もこれから同じ宿題をやる側で、自分の数字はまだありません。
この目安を自分の足に落とす手順は単純です。使う時間足を一つに決める。その足で、並んだ安値を一度抜いてから上がった場面を集める。抜け幅を測る。集まった幅の中で多いものを、自分の目安に置き換える。10〜20pipsは、その作業が終わるまでの仮置きです。
【数字の扱い】
10〜20pipsは仮置きの目安で、出所は実質1系統です。
時間足・通貨ペアで変わるので、自分が使う時間足の過去チャートで測った幅に置き換えてください。
必ず来るわけではないし、逆張りの根拠にもしない
ここまで読むと「並んだ安値の下には必ず価格が来る」と読めてしまうかもしれません。来ないことがあるんです。強いトレンドの中では、並んだ安値を放置したまま上がり続けることは普通に起きます。
「溜まり場が磁石なら、なぜ取りに来ないのか」という反論は当然あって、答えは山場で書いた力学にあります。下に行くには売りが要る。強い上昇の中では、ラインに近づく前に買いが入ってしまい、割るための売りが集まらない。溜まり場は、何があっても引き寄せる磁石というより、売りが集まったときに初めて働く受け皿。私はそう理解しています。
だから使い方は二つに分けています。一つ目は、自分の損切り位置の点検。刈られやすい場所に置いていないかを見るレンズです。二つ目は、エントリーの待ち方。帯を抜けて戻る動きを確認してから入る、という順番の話です。どちらも、溜まり場を狙って先回りで逆張る使い方ではありません。溜まり場の存在は入る理由にならず、抜けて戻ったという事実が理由になります。
「自分だけ狙われている」についても一言。個人の口座が見られていると考えるより、同じ場所に置いている人が多いと考える方が、上の力学と矛盾なく説明がつきます。同じ教科書で学べば、同じ場所に置くからです。
私の土台はダウ理論・エリオット波動・グランビルの法則で、流動性の見方はそれを捨てて乗り換える話ではありません。押し安値を割ってすぐ戻る「ダマシ」のうち、裏に損切りが並んでいた場面は、この見方で言うスイープと同じ現象です。全部がそうだとは言いません。ただ、押し安値割れをダマシの一言で片付けずに済む場面が増えて、待つ理由が一つ増えました。手法を増やす話でもないので、その辺りはFX手法の作り方の記事に分けてあります。
明日やることは、過去チャートで「自分が刈られた場所」を数えること
読んで分かった気になるのは、私が昔やっていたことと同じです。やることは3つ、道具は過去チャート。
通貨ペア・時間足・損切りを置いた価格。記録がない人は、覚えている数個からで十分です。当時の私には記録がなく、ペアも抜け幅も残っていません。だから今は、記録を勧める側に回っています。
並んだ安値の真下、前日安値の少し下、キリ番の裏。思い返すと、私の場合はほぼ全部がそこでした。
時間足を固定して、並んだ安値を一度抜いてから上がった形を数えます。何pips抜けたか、何本で戻ったか。ここで初めて、自分の時間足での目安ができます。
STEP3は、チャートをただ眺めるより、過去チャートを巻き戻して1本ずつ進められる環境がある方が早く進みます。私が使っているのはForex Tester Online(FTO)という検証ソフトで、ブラウザで動くのでMacでもWindowsでも同じです。過去チャートを動かす手順は過去検証のやり方の記事に書いてあります。
損切り位置を変えると、同じ手法でも勝率と損益の形が変わるんです。良し悪しは勝率では決まらないので、勝率より期待値で見る記事と合わせて数えてほしいと思います。損切りを先送りしていた頃の私がどういう夜を過ごしていたかは、ポジポジ病の記事に書きました。
よくある質問
損切りを置かなければ刈られないのでは?
刈られない代わりに、戻らなかったときに口座ごと持っていかれます。私は損切りを先送りして、それを何度かやりました。損切りは外すものというより、置く場所を変えるものです。
「帯の外側に置く」は、損切りを広げることと何が違うのですか?
広げること自体は同じです。違いは、何pips広げるかを気分で決めずに、過去チャートで測った抜け幅の外に置くと決めることです。広げた分はロットを落とさない限り1回の損が増えるので、幅と一緒にロットも決めます。
指標発表のときの急な往復も同じですか?
両側の損切りを一気に吸う動きとして見ることはできますが、値幅も速さも平常時とは別物です。10〜20pipsの目安は平常時の話として読んで、指標直後は別物として扱うのが無難です。
次に損切りを置く前に
監視されているように見えたあの反転は、損切りが溜まる場所に価格が来て、吸い終わってから戻った、というだけのことでした。自分の損切りが、みんなと同じ場所に置いてあった。それが分かると、次に置く場所の決め方が変わります。
【次に損切りを置く前に】
その線は、自分以外の何人が同じ場所に引いているか
真裏を避けて、測った抜け幅の外側に置けないか
抜けて、戻ってくるのを確認してから入る選択肢はないか
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