「自分が学んできた押し安値や第3波の話は、もう古いんじゃないか」。Xでここ数年、BOSやCHoCH、FVGといった言葉を見るたびに、私はそう考えていました。2026年に入ってSMC(スマートマネーコンセプト)を学び直し始めた時も、ダウ理論・エリオット波動・グランビルの法則の組み合わせを大前提に据えて検証してきた身として、土台ごと入れ替えるかどうかで揺れたんです。
土台は入れ替えませんでした。SMCの用語を一つずつ自分の言葉に訳すと、大半が同じ場面の別の呼び方でした。足したのは「注文が集まる場所に価格が寄る」という見方で、そこから押し目の待ち方が少し変わっています。スイープを待つことも、FVGを定規に使うことも、その見方から派生した運用の話です。
読み終わる頃には、SMCの言葉を自分の手法の言葉で言い直せて、「乗り換えるか」という問いが「何を足すか」に変わっているはずです。先に断っておくと、成績の話ではありません。土台の組み合わせも今はフォワード検証(過去の記録でなく、これからの値動きでルールを試すこと)の途中ですし、SMCは学び直し中のレンズです。扱うのは、二つの言葉が同じ値動きを指しているか、そこまで。出典はICT(The Inner Circle Trader)本人の動画と、日本語では「ゆうきのせかい」の記事です。
【この記事の核心】
SMCは新しい相場の法則ではなく、同じ値動きの別の言葉。
SMCとダウ理論の違いを見る前に、同じ1場面をまず私の言葉で
下げてきた価格が、ある水準で2回止まる。3回目にその安値をわずかに割って、割った足が長い下ヒゲを残して戻ってくる。そこから上に強く走って、直前の戻り高値を実体(終値)で抜ける。少し押して、押したところからまた上がり、さっき付けた高値を更新する。模式的な形ですが、この記事の翻訳はずっとこの場面で行います。
私の言葉で語るとこうなります。2回止まった安値はダブルボトム。3回目の割れはダマシで、線を線として見ていた頃の私がヒゲに刈られたのはここです。強い上昇で戻り高値を実体で抜けた瞬間がダウの転換シグナル。トレンドライン抜けと移動平均線抜けが重なっていれば、エリオットの第1波をここで先に認定します。この場面でグランビルが出てくるのは、その移動平均線抜けを転換の確認に使う所と、押しの深さの目安にする所くらいです。
そのあとの押しが第2波で、第1波にフィボナッチを当てた23.6〜61.8%(中心は38.2%)の帯で待ちます。これは私が学んでいる側の数値で、一般には50〜61.8%を深い戻りとする教え方もあります。押し目から高値を更新したら第3波の中、ダウの言葉では継続です。三つの理論の分担を表にすると、こうなります。
| 理論 | 答える問い | この記事の場面では |
|---|---|---|
| ダウ理論 | 転換か、継続か | 戻り高値の実体抜け=転換。その後の高値更新=継続 |
| エリオット波動 | 波のどこにいるか | 転換の上昇が第1波。押しが第2波。再上昇が第3波 |
| グランビルの法則 | どこで入って、どこで出るか | 移動平均線抜けで転換を確認。離れた価格は戻るので押しの深さの目安に |
同じ場面を、SMCの言葉で語り直す
2回止まった安値の下には、そこで買った人の損切りが並びやすい。SMCではこの並んだ安値をEqual Lows(イコールロー)と呼び、その真下にある損切りの束を流動性と呼びます。3回目の割れはスイープ(Liquidity Sweep)で、下の損切りを一度吸ってから戻る動きです。
下に行くには誰かが売る必要があります。薄い売りで割れ、裏の損切りが連鎖して売りがまとまって出て、それをまとめて買いたい側が吸い切ったところで売りが尽きる。意図があってもなくても同じ形です。力学の細かい話は損切り直後に反転する理由の記事に分けました。
スイープ直後の強い上昇はディスプレイスメント(Displacement・強く一方向に動く値動き)。その上昇が直前の戻り高値を実体で抜けた瞬間がCHoCH(チョック・Change of Character)で、ICT本人はMSS(Market Structure Shift)と呼びます。MSBと書く人もいますが、MSBは人によって指す向きが違うので、この記事では使いません。
そのあとの押しは、スイープの安値から直近高値までのレンジに50%の線を引いて、下半分(ディスカウント・割安側)に入ってくるのを待ちます。押し目から再び高値を更新したらBOS(Break of Structure)で、こちらは継続の合図。CHoCHとは向きが逆になります。
【向きを取り違えやすい3語】
CHoCH=転換(押し安値・戻り高値の実体抜け)
BOS=継続(トレンド方向への高値更新・安値更新)
MSB=人によって指す向きが違うので、この記事では使わない
押しがどこまで戻ってくるかの目印として使われるのがFVG(Fair Value Gap)です。ディスプレイスメントの途中に残る、連続する3本のローソク足の1本目と3本目のヒゲが重ならない空白のこと。ここまでを1枚に重ねたのが次の図で、上の段が私の言葉、下の段がSMCの言葉、同じ番号が同じ場所を指しています。

SMC用語とダウ・エリオット・グランビルの対応表(9行)
真ん中の列が私の言葉、右の列が同じかズレるかです。
| SMCの言葉 | 私の言葉(ダウ・エリオット・グランビル) | 同じか、ズレるか |
|---|---|---|
| 流動性(Liquidity) | 注文の集中(サポレジ裏の損切り・新規と決済の重なり) | ほぼ同じ。注文そのものを指す |
| Swing High / Swing Low | ダウの高値・安値(押し安値・戻り高値の材料) | 同じ山と谷を別の決め方で選ぶ(SMCは3本足で取る決め方・5本足で取る人もいる/ダウは更新の起点) |
| Equal Highs / Equal Lows | ダブルトップの2つの山の上・ダブルボトムの2つの谷の下 | 同じ場所。ネックラインの裏ではない |
| スイープ(Liquidity Sweep) | ダマシのうち、裏に損切りが並んでいた場面 | 重なる。ダマシの全部がスイープとは限らない |
| CHoCH(ICT本人はMSS) | 押し安値・戻り高値の実体抜け=ダウの転換シグナル | 同じ。向きは「転換」 |
| BOS(Break of Structure) | 高値更新・安値更新=ダウの継続 | 同じ。向きは「継続」。CHoCHと逆向き |
| ディスプレイスメント | 私が習った「収束→拡散」(移動平均線が束になってから一方向に開く動き)の初動 | 初動の形は似る。第3波そのものとは言わない |
| FVG(Fair Value Gap) | 第2波の帯の中で「どこまで引きつけるか」の点(グランビルの「離れた価格が戻る」とは別) | ズレる(機能が違う)。最初はグランビルに寄せて読んでいたが、訳し直した |
| プレミアム/ディスカウント(0.5で分ける) | 第2波の戻り=フィボ23.6〜61.8%(中心38.2%) | 半値を挟む同じ思想。数字は別 |
抜けを実体で採るのは、そう見る流派が多いという目安で、ヒゲで見る人もいます。表を縦に読むと、真ん中の列のほとんどが、私がもともと使っていた言葉で埋まりました。
ちなみに、表から落とした言葉が一つあって、Low Hanging Fruit。手の届く果実から取るという利確の考え方で、私が習った「深追いしない、手前の高値安値で利確」と同じことを言っています。
私に効いた3行(流動性・CHoCH・FVG)
流動性 ↔ 注文の集中
私が学んできた側では、並んだ安値の下を「注文が集中する場所」と習いました。サポートで買った人の損切り、ブレイクを狙う新規の売り、利確の決済が同じ水準に重なるから、抜けた時に値が走る。SMCはここを流動性と呼び、損切りの束そのものを見ます。
照らす角度が少し違います。注文の集中は「だから抜けたら走る」を説明し、流動性は「だから価格がそこへ来る」を説明する。私に抜けていたのは入口側でした。割れてから走る理由は知っていて、割れる前に価格がそこへ寄る理由を持っていなかった。ヒゲ1本で刈られて「ダマシだ」で片付けていた時期が長かったのは、たぶんこれです。当時は記録を付けておらず、ペアも時期も手元に残っていません。だから今は、記録を勧める側に回っています。
CHoCH ↔ 押し安値・戻り高値の実体抜け
スイープのあと戻り高値を実体で抜けた瞬間、が場面の中の位置です。ICT本人がMSSとして説明しているのはICT Mentorship 2022 Episode 3(英語・2026年8月閲覧)で、私の理解では、見ている線は「高値をつけた押し安値」「安値をつけた戻り高値」。ダウと同じ線です。
違うのはその手前で、ダウは抜けたかどうかを見る。SMCは抜ける前に、反対側の安値がスイープされたかを条件に足します。ダマシ抜けと本物の第1波は確定前には区別しづらい、というのが私の土台の弱点で、そこにスイープの有無という条件が入る。押し安値割れをダマシの一言で片付けずに済みそうな場面が、見えてきたところです。
FVG ↔ 第2波の帯の中の「点」
この行は、私が一度訳し間違えた行です。最初はグランビルの「行き過ぎは戻る」に寄せて読んでいました。移動平均線から離れすぎた価格はいずれ戻る、FVGも走った後の空白へ戻る、なら同じ思想だろうと(ICT本人の説明はCore Content Month 4 のFVG回・英語・2026年8月閲覧)。
使ってみると向きが違いました。グランビルの方は、離れた価格が移動平均線へ逆戻りする話。FVGの方は、走った後の空白へ一度戻って、そこからまた伸びる場所の話です。戻る先も、戻った後に起きることも別でした。私の側で近いのは、第2波で待つ23.6〜61.8%の帯の中で「どこまで引きつけるか」を決める点の方で、グランビルではありません。表の「同じ」は、この行だけ取り消しました。
対応しない・ズレる箇所(翻訳できないものは、できないと書く)
私がよく読むゆうきのせかいのアルゴリズムの記事は、アルゴリズムはエリオット波動やダウ理論を価格を動かす要素とは見ていない、という立場です。ゆうき氏の記事には、SMCと既存の理論を同じ物として翻訳できる、とは書かれていません。
氏が別物と言うのは、原因の話だと私は読んでいます。価格を動かしているものが、ダウやエリオットを見ているのかどうか。私がこの記事で重ねているのは形の方です。意図があってもなくても、並んだ安値の下で一度割れて戻る形は同じで、その形に付いた名前が二つある、と見ている。氏の記事を読んだ上での私の立場なので、別物と見る人がいるのは承知しています。翻訳できると見るのは私の立場、というのがこの記事の限界です。
形の外側にも、重ならない部分があります。ICTの教材には、銀行間の価格配信アルゴリズム(IPDA)が流動性を目当てに価格を運ぶ、という前提が通底していて、ダウにもエリオットにもグランビルにもこの前提はありません。私はアルゴリズムの存在までは言い切らず、「注文が集まる場所に価格は来る」と言い直しています。ダウの押し安値は構造の話で、SMCのスイープは注文の話、というズレもあって、指す水準は同じでも、片方は線の位置、片方はその裏の損切りと、見る対象が違います。
数字も別です。第2波の戻りを23.6〜61.8%で待つのと、レンジを0.5で割って下半分で待つのは、半値を挟む同じ思想ですが同じ数字ではありません(定義はゆうきのせかいの記事・2026年8月閲覧)。0.5は帯のほぼ中央を通るので重なって見えますが、重ねても根拠が二重に見えるようになるばかりで、精度は上がりません。何年も埋められないFVGがあることはゆうき氏のFVGの記事にも書かれていて、空白があるから必ず戻る、とは言えません。
私の立場(SMCに置き換えない理由)
土台はダウ・エリオット・グランビルのまま、SMCは「注文の集中」を言葉にするレンズとして足しています。途中で土台を替えると、何が効いていたかが分からなくなる。検証中の私だけでなく、記録を積んできた人ほど重い理由だと思います。SMCの方が成績が良いかどうかは、私には分かりません。分かっているのは、乗り換えた瞬間に手元の記録が別の手法のものになることです。数えるなら、期待値で見る記事の見方で、自分の記録を先に数えてからでも遅くありません。
もう一つ、手法を増やすほど迷う時間が増えるのを、根拠を持たずに勢いでエントリーしていた頃に身をもって知っています。当時の私は、入る理由が「今日はいけそう」でした。そこに道具を足しても、理由が増えるわけではなかったんです。手法を探すのをやめる話はFX手法の作り方の記事に書きました。
【乗り換えで起きやすいこと】
SMCの用語を覚えるたびに、手法が一つ増える
検証途中の土台を捨てて、何が効いていたか分からなくなる
【足し方】
SMCの用語は、自分の手法のどの場面かに訳してから使う
足すのは「注文が集まる場所に価格が寄る」という見方。待ち方の変更はそこから派生させる
明日やることは、過去チャートの1場面に2つのラベルを貼ること
過去チャートで、並んだ安値を一度割ってから上がった場面を1つ選ぶところから。
ダブルボトム、ダマシ、転換の線、第1波、第2波の帯。いつもの言葉をチャートに直接書き込んでください。
Equal Lows、スイープ、CHoCH、FVG、0.5の線。対応表を開きながらで十分です。
自分の手法の穴なのか、言葉の違いなのか。何を足すかはここで決まります。
私もこれから同じ宿題をやる側です。過去チャートを巻き戻して1本ずつ進められると、同じ場面を何度も見直せます。私が使っているのはForex Tester Online(FTO)で、ブラウザで動くのでMacでもWindowsでも同じです。
よくある質問
スイープがないままCHoCHした場合、無効ですか?
無効とは言い切れません。ダウの転換シグナルとしては成立しています。私は、反対側の安値がスイープされた場面を優先して待つ、という順番の話にしています。スイープを条件に入れる整理がSMC側に多い、というのが私の理解で、目安として受け取ってください。
どの時間足で貼ればいいですか?
上位足で方向を決めてから下位足で場面を探す順番は、私の側もSMC側も同じです。下位足ほど足の形が崩れて、並んだ安値もスイープも見分けにくくなるので、最初の1枚は普段より上の時間足で選ぶ方が迷いません。どの足でも同じ名前で呼べるかどうかを確かめるのが、この宿題です。
一番誤訳しやすい言葉はどれですか?
BOSとCHoCHの向きです。CHoCHが転換、BOSが継続で、セットで出てくるので学び始めの頃は私も毎回確認していました。MSBは人によって指す向きが違うので、私は使いません。次に危ないのがFVGで、私自身がグランビルに寄せて一度誤訳しています。
次にSMCの用語を見かけたら
SMCが指していたのは、私が押し安値や第3波と呼んできたのと同じ値動きでした。名前が二つ並んだ、というのがこの記事の結論です。
【次にSMCの用語を見かけたら】
その言葉は、自分の手法のどの場面を指しているか
翻訳できない部分は、視点の違いか、数字の違いか
過去チャートの1場面に、2つのラベルを重ねてみたか
過去チャートに2枚貼ってみると、重なる行と重ならない行が自分の手法の側で出てきます。私もこれから貼る側です。
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【参考】
ダウ・エリオット・グランビルの組み合わせは、松山氏(まっちゃんのFX研究会)の理論編の動画を参考に、私なりに検証しているものです。
SMC側の出典は本文中のICT本人の動画とゆうきのせかいの各記事(いずれも2026年8月閲覧)。



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